第七官界彷徨

彷徨というのはさまようことなんだ。

六本木の交差点。1983年2月
アマンドと防衛庁の位置をよく確かめて
高速道路に沿ったゆるい坂道を下る。
よかった、目じるしの四川飯店がある。
今日は間違えなかったぞ。
ちょっと先の右側が自由劇場。

第七官界彷徨(だいななかんかいほうこう)という
言葉の小気味良さにちょっと行ってみようと思った。
尾崎翠も第七官界もなにもしらない。
演出:串田和美 「第七官界彷徨」自由劇場
帰りに原作の本を買って、それからは本の中をさまよう。

c0065761_23465374.jpg「第七官界彷徨」(作 尾崎翠 創樹社)

「よほど遠い過去のこと
秋から冬にかけての短い期間を
私は、変な家庭の一員としてすごした。
そしてそのあいだに
私はひとつの恋をしたようである」

一助、二助、三五郎の住む家。
女中部屋の住人ちぢれ毛の町子には
こんなこころざしがある。

「私はひとつ、人間の第七官にひびくような詩を書いてやりましょう」

蘚の恋情、あんこを煮る鍋、コミックオペラ、
くせ毛直しのびなんかずら、そして分裂心理学・・・
ページを繰るたび、言葉の胞子がはじけ、
尾崎翠の世界は読者を培地にして発育する。

彷徨しながらの七ならべも楽しめる。
一助、二助、三五郎。六の秘密は読んでから。
四を誰かが留めているから。

尾崎翠
画像は「尾崎翠全集」(創樹社)です
[PR]
by mironobonus | 2005-04-29 23:47 | 読書の時間
<< さとうたみこの秘密 中庸の美 >>