カテゴリ:食材とお料理( 6 )

西荻散歩〜こけし屋の秘密

西荻窪には
どうしても行かなくてはならない場所がある。
行って自分の姿を
取りもどしてこなくてはならないときがある。
老舗のフランス料理店 こけし屋の二階

かつて
こけし屋は木造の二階建て
二階に上がる階段は
途中まであがるとぎしぎしときしみ
二階のテーブル脇にならんでいるこけしが
倒れそうに揺れる
白いテーブルクロスは白すぎずやさしい

日曜日のこけし屋でランチのぜいたくをしようと
午後1時を充分過ぎた頃に
学生がひとり本を持って入る。

注文はランチ用に作ってあるメニューで
800円ぐらいの軽い一皿
たとえば、卵とほうれんそうのグラチネ
そうでなければ、定番メニューの安いもの。
たとえば、サフランライスと海老のソースアメリケーヌ
ごくたまに
昼間から、こけし屋名物、ポトフで
寒くなると
世界で一番おいしいこけし屋のオニオングラチネ

それが、学生としてはぎりぎりのところで
デザートはもちろんなし
一皿をていねいに頂いて帰る
注文してから料理がくるまでの間は
手持ちぶさたで本を読んで過ごす

ある日、帰ろうかなと思っていると
黒服のウェイターが早足で近づいてきた
「今、キャンセルがあったのですが
 ピーチメルバはいかがですか?」
サービスだというのでビックリしながら
一階の喫茶室でどこかのカップルがキャンセルした
ピーチメルバの片方をいただいてしまった
それからは
「宿題を持ってきてここでやればいいのに」
と長居をすすめてくれたり
「こんなの作ってくれたんだけど」
と突然、丸いスポンジケーキの切り落としと
黄桃の端とカスタードソースを使った
目玉焼き型のデザートを厨房から持ってきてくれたりと
西荻窪から引っ越すまでの数年間
ぜいたく中のぜいたくが続いたのである

先日こけし屋に寄ったら
ピーチメルバのウェイターはまだ仕事をしておられた
だいぶ偉くなったようだったが
まだ当時と変わらない様子で指示を出しておられた
思い違いかもしれないから
三十年も前のピーチメルバは
私だけの秘密にしておこう

ランチタイムを過ぎた
お客のだれもいない
日曜日の午後のこけし屋の二階
はじめは、東京に来たばかりの自分が
背伸びをしながらなんとか自分を保ちつつ
1人でランチを食べていた場所だったのだが
いつのまにやら
自分の身に何が起こっても
その場所に入ってしまえば
ありとあらゆる邪悪なものから
自分自身を守ってくれる
魔法陣のような場所になってしまった

しかし、西荻を離れるかという時期に
こけし屋は4階建てのビルに改築
となりはなんとLホテルに!
さてさて、魔法陣の力はいづこへ
『K屋のKはKABUKIのK?』
COMMING SOON!
(...really?)
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by mironobonus | 2005-07-28 23:46 | 食材とお料理

駒形どぜう

夏はやっぱりどぜうがいい。
暑かった日の夕暮れに
店を出たら暗くなっているだろうという頃に
駒形どぜうに行くのがいい。

順番を待つ人たちが大勢いたはずなのにc0065761_20585581.jpg
店の人の采配は気味よく すばやく
店の前に床几に座ったかと思う間に
じき名前を呼ばれ案内される。
桟敷でも、二階でも、
駒形どぜうの気持ちは変わらない。

丸鍋という骨ごとのどぜうの鍋
平たい鉄鍋の割り下の中に
どぜうが並んでいる
鍋一枚目を持って来て火にかけ
おねいさんは
はっきりした若い声で言う。
「召し上がり方はご存じですか?」
刻んだネギはどぜうが見えないほど山盛りに
ネギがしんなりしたらいただく
七味、山椒の用意はあるが、
最初はそのまま、のちに七味だったり
山椒だったりして、
煮詰まったら割り下を足しながら食べる。
どちらさまもおねいさんの説明を
すこし自分流に変えて食べている

「通」ぶって牛蒡(ごぼう)を頼むと
細かいささがきの牛蒡が
赤いお椀に入ってくるから
それを二枚目の鍋が来たら
空の鍋の底に上手に広げて敷く
どぜう鍋のおかわりを持ってきたおねいさんは
ちょっと気を引き締めながら
並んだどぜうをいっぺんに
牛蒡の上にさっと移す

駒形どぜうの美しさはc0065761_2041140.jpg
どぜう鍋のおかわりを持って
立ち働いている
おねいさんたちの姿にある

自分の目前の鍋が空になったら
おねいさんの動きを見よ
空の鍋を見つけると
遅れてはならないという気持ちで
さっと帳場に飛び込み
どぜうが並んだ鉄の平たい鍋を持って飛んでくる。
そして客の空の鍋の横に
牛蒡のお椀を見つけたりすれば
鍋を持ったまま、凛(りん)とした声で、
もうどうしてもそうしてもらわないと困る、
という意志を持って、
「牛蒡を下に敷いてください」と言う。

背後の席から
「玉(ぎょく)ひとつ」と
本当の常連の声がかかる。
長く駒形どぜうに通った客の低く曇った深い声と
もうもうずっと昔からある店構えの古さに対比して
「どぜう汁です。ネギと七味でお召し上がりください」
と言う若くて張りのある声は
ちょうど褐色の割り下に浸かったどぜうにかぶさっている
まだ青々とした刻みネギのように
駒形どぜうには
なくてはならないものになっている
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by mironobonus | 2005-06-23 20:38 | 食材とお料理

肉骨茶(パクテー)爆発寸前

アメ横に行ったついでに肉骨茶の素を探してみた。c0065761_1742843.gif
アメ横センタービルの地下には
アジアの香りと匂いと臭みが充満している。
どこもかしこもアジア食材店。
丸鶏を売っている店に肉骨茶の素はあった。
こんどは、ちゃんと袋に肉骨茶と書いてあり、
作り方も排骨1斤。。。と豚肉用。

前はなかったでしょ? と訊くと
一週間ぐらい前に入ったのだと言う。
そういえば、周辺の肉屋には
豚肉の骨付きあばら肉がやたらに多い。
肉骨茶はそろそろ爆発(ブレイク)するのかもしれない。
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by mironobonus | 2005-03-28 17:41 | 食材とお料理

大谷政吉商店 いわしの銚子煮

「すぐ多摩川なんだよ。あれがほら、もう堤防だ」
灰色の堤防に向かって歩く。
こちら側に舗装道路、向こう側にコンクリの堤防。
二つを渡す、半分朽ちた木の橋。

橋を渡ろうとすると
華やいだ醤油の匂いがする。
左を見る。プレハブ平屋の建物で佃煮を売っている。
ここはおいしいぞ。
ピンと来て店の人に話しかけると、
「うちはもう120年もやっているんですよ」

c0065761_20512330.gif
プレハブの老舗は、大谷政吉商店。
いわしの銚子煮を買ってみた。
「ふつうは頭だけ取って
 煮てあるんですけど、
 うちのは骨と内臓も取って、
 一匹一匹焼いてから煮るんです」


お醤油が効き過ぎず甘みがへこまず、
120年のおかげさま。
二匹でお茶碗一杯の白いご飯をいただきました。
御馳走さまでした。

大谷政吉商店
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by mironobonus | 2005-03-20 20:51 | 食材とお料理

肉骨茶(パクテー) つづき

「あ、これこれ」
路地奥の店の主人は、
少し離れた食材棚に引っかけてあるハデな袋を指しているが、
遠目に見ると全く変わらない。
よく見ると、わずかに豚肉仕様のようで、
「焼酒雛」が「四・・」となっている。
パッケージ裏にも、鳥の料理だけでなく、
豚の排骨を使った料理法が数行書いてあった。

中国語を知らなくても、中国語と日本語の文法が異なっていても
漢字の力は肉骨茶の料理法を教えてくれる。

鍋に水と肉と肉骨茶の素と紹興酒と
干し椎茸をそのまま入れ、
煮ること1時間。途中で油揚げを入れ、
塩と魚醤で味をつける。
部屋は、漢方の香りでいっぱいになった。

味をおそるおそる、みる。c0065761_11123814.gif
茶色いスープの味は、
部屋に充満する強い香りとは
一線を画した上品さ。
うん! このお料理は身体の味方。
新しい味の世界がまたやってきた。

本来マレー系中国人の料理だそうだが
買ってきた肉骨茶の素は台湾製。
台湾のサイトに行ってみた。
Welcome to @food 網路美食坊
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by mironobonus | 2005-03-06 11:06 | 食材とお料理

肉骨茶(パクテー)

シンガポールに滞在したことのある友人に
肉骨茶(パクテー)という料理があると聞いた。
骨付きの豚肉を、漢方味のスープで煮込んだもので、
働く人の朝ご飯として生まれたものらしい。
荻窪に一軒、おいしそうなお店があったが、
行く時間がないので、作ってみることにした。

「パクテーの素」が必要とのこと、
ネットで買おうと探したがヒットせず、
たまたま出かけた横浜の中華街で、食材店の主人に聞いてみた。
ない、という。「このへんであるとしたら。。。」と路地の奥の
食材店を教えてもらい、行ってみた。

路地奥の店の主人は「パクテー」を知らなかった。
しかし、漢方の入ったダシ袋みたいなもの、と説明したら、
「あ、はいはい」。
ハデな袋をホチキスで10連ずつとめた紙の台紙が
食材の棚にひっかけてあった。鶏料理の写真があるが、
台紙の方には、肉骨茶とも書いてある。
「あった!」。

路地奥の店の主人は言う。c0065761_11375677.gif
「もう一種類ありますよ、
どこだったかな」(つづく)
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by mironobonus | 2005-03-05 09:53 | 食材とお料理