駒形どぜう

夏はやっぱりどぜうがいい。
暑かった日の夕暮れに
店を出たら暗くなっているだろうという頃に
駒形どぜうに行くのがいい。

順番を待つ人たちが大勢いたはずなのにc0065761_20585581.jpg
店の人の采配は気味よく すばやく
店の前に床几に座ったかと思う間に
じき名前を呼ばれ案内される。
桟敷でも、二階でも、
駒形どぜうの気持ちは変わらない。

丸鍋という骨ごとのどぜうの鍋
平たい鉄鍋の割り下の中に
どぜうが並んでいる
鍋一枚目を持って来て火にかけ
おねいさんは
はっきりした若い声で言う。
「召し上がり方はご存じですか?」
刻んだネギはどぜうが見えないほど山盛りに
ネギがしんなりしたらいただく
七味、山椒の用意はあるが、
最初はそのまま、のちに七味だったり
山椒だったりして、
煮詰まったら割り下を足しながら食べる。
どちらさまもおねいさんの説明を
すこし自分流に変えて食べている

「通」ぶって牛蒡(ごぼう)を頼むと
細かいささがきの牛蒡が
赤いお椀に入ってくるから
それを二枚目の鍋が来たら
空の鍋の底に上手に広げて敷く
どぜう鍋のおかわりを持ってきたおねいさんは
ちょっと気を引き締めながら
並んだどぜうをいっぺんに
牛蒡の上にさっと移す

駒形どぜうの美しさはc0065761_2041140.jpg
どぜう鍋のおかわりを持って
立ち働いている
おねいさんたちの姿にある

自分の目前の鍋が空になったら
おねいさんの動きを見よ
空の鍋を見つけると
遅れてはならないという気持ちで
さっと帳場に飛び込み
どぜうが並んだ鉄の平たい鍋を持って飛んでくる。
そして客の空の鍋の横に
牛蒡のお椀を見つけたりすれば
鍋を持ったまま、凛(りん)とした声で、
もうどうしてもそうしてもらわないと困る、
という意志を持って、
「牛蒡を下に敷いてください」と言う。

背後の席から
「玉(ぎょく)ひとつ」と
本当の常連の声がかかる。
長く駒形どぜうに通った客の低く曇った深い声と
もうもうずっと昔からある店構えの古さに対比して
「どぜう汁です。ネギと七味でお召し上がりください」
と言う若くて張りのある声は
ちょうど褐色の割り下に浸かったどぜうにかぶさっている
まだ青々とした刻みネギのように
駒形どぜうには
なくてはならないものになっている
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# by mironobonus | 2005-06-23 20:38 | 食材とお料理

Up Up And Away  The 5th dimension

  1ドルがまだ、360円だったころ。
  日曜日の朝は「兼高かおる世界の旅」
 
 兼高かおる「ここは、村の人たち専用の市場ですの。そうなんですのよ。
       こちらではみなさん、こうやっていらっしゃるの。
       お花をね、髪飾りに挿していますのよ。ほほほほほ。
       ですからね、私もちょっとマネをしてみましたのよ」
 芥川隆行 「ほほう、なかなか似合いますよ、兼高さん。
       馬子にもなんとかと言いますからね」
 兼高かおる「あらまあ、お言葉ですわね。おほほほほ…」


  兼高かおるさんの c0065761_23363425.jpg
  やわらかく上品な口調が
  世界を語ってくれたおかげで
  私は世界が大好きになった!
  兼高かおるさんのショルダーバッグ
  ストラップは短め!
  今も自分の身体に習慣として残る
  テレビの中の兼高のモード。


              番組のスポンサーは航空会社
              Pan American Airline
              イラクを攻撃するアメリカは大嫌いでも
              Pan American AirlineのCM song
              Up Up And Awayは懐かしむ。

                     さて、新しい旅にでよう。
                     矛盾だらけのココロを持って
                     もうなくなってしまった
                     エアラインのショルダーを
                     好きだったアメリカの
                     形見のように抱えて。

     ♪Up Up And Away, In my beautiful, my beutiful baloon!



              The 5th dimensionのベスト盤
              Up Up And Awayよりもっとすてきな曲発見。
              やっぱり上には上がある。Up Up And Away ♪
      ※上の番組のセリフは当時を思い出して再現したものです。実際のものではありません
  
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# by mironobonus | 2005-06-13 23:20 | music

シベリア デラックス

シベリアというお菓子
売っているのは見たことがあっても
見るからに大味で
見ただけで味がわかってしまうようで
ずっと食べることはなかった
ちょっと気持ちが動いて買ってみた

シベリアといえば三角形だがc0065761_215769.jpg
買ったシベリアは四角く
切り口は食べ物とは思えないほどキレイ
水飴の味がする水ようかんのような中身
甘さがいつまでも続いて
濃いめのお茶一杯では足りない
和菓子なのか洋菓子なのか
ちょっとよくわからない風情である

シベリアの本名はシベリアケーキ
パンやさんが作り始めたという
シベリアケーキは
昭和初期の子供たちにとって
「食べたいお菓子ナンバーワン」
だったこともある往年の名女優であった
今ではスーパーのパン売り場の
目立たないところにあるかないか
甘食サンリツパンなどとともに
不思議な食べ物の範疇に入っている

濃いお茶二杯で
シベリアを食べて数日後
深くて濃い甘みがなつかしくなった

つまらない保身をする人の
ひからびて味気ない言葉を聞いたあとに
いまではすっかり
世話焼きのおばちゃんになってしまった
往年の名女優から
路地でスーパーの袋を持ったまま
ベタで紋切り型のセリフを喰らいたい
「あんたね、そのくらいで泣いて
 どうすんのよ、あたしなんか・・・」

おばちゃんは自分の買い物袋から出した
シベリアをひとつティッシュにくるんで
私にくれる。それはシベリア デラックス!

遠い昔、この大味のお菓子は
子供がいちばん食べたいお菓子だった
その理由に気付く

シベリアケーキ
シベリアの由来
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# by mironobonus | 2005-05-28 21:59 | お茶とお菓子

anan な気持ちなのです。PART2

☆当方23才男子。c0065761_22582130.jpg
 デザイン研究所生。
 部屋を無料で借りたい。
 どんなにきたなくても
 せまくても結構。
 そのかわり
 諸雑用一切引き受けます。
 8時〜9時PM、電話ください。

anan のminicomiページに
投稿したこの人はササキさん。
ササキさん、もう、部屋は見つかりましたか?

☆ダックスホンダ50ccc0065761_22591587.jpg
 3万円ぐらい、色はもちろん赤!
☆ビートニクの詩人
 グレゴリーコオソについて
 教えてください。
☆中古のサスペンダー求む。
☆ペルシャ猫が欲しいぞよ。

なにかしたい人
なにかしなくちゃと思う人
カッコよくなりたい人が
72年 ananの投稿記事の中にいる。

次号の特集はエルのトッパーコート
パンタロンとの組み合わせを特集します。
11月5日発売で〜す。210円

11月5日 ササキさんの部屋は
もう見つかっているだろうか。
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# by mironobonus | 2005-05-23 23:00 | 読書の時間

anan な気持ちなのです。PART1

1972年秋のananを見つけたのです!
c0065761_0301457.jpgとっても懐かしくて
新しい気分になったってわけ。
72年の秋のスーツは1万円台が圧倒的。
フランネルの
パンタロンスーツもあるし、
コール天のサハリを
バッチリ決めてもいいわけなんだし、
ヘリングボーンのプリーツスカートに
ブレザーだったり、
もう、流行なんかにとらわれずに、
好きなものは好き!
って感じで勝負できるみたい。c0065761_0334791.jpg

原宿のブティックは
「5つの銅貨」さんも
「一つ目小僧」さんも
今ではすっかり
なりをひそめてしまったんだけど
カラフルな小物に
パンダ付きのスモックを着て
70年安保のざわざわっとした気持ちを
吹っ切ってしまおうって寸法。
長崎や京都の街に、私達、
おでかけしてしまいたいって感じなの。

テイジンテトロンの
オレンジ色のサハリーコート8900円
誌上発表と同時発売。急げ、ananのお店へ!
72年anan文体って、今読むとすこしぶきっちょ。
でも、今野雄二さんが取材したロンドンの男の子の記事や
鳥居ユキさんのマンション訪問、音楽も小物たちもみんな、
好きなものを好きと言いたい、
新しくって元気イッパイな「私達」の味方なんじゃない?

ちょっと背伸びしたそのころのJapon(ジャポン)が
とってもカワイイのだ。
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# by mironobonus | 2005-05-20 00:31 | 読書の時間

色物の素敵 林家正楽

上野の鈴本演芸場へ行った。
お目当ては紙切りの林家正楽。
この正楽は三代目である。

出番になると
目つきの悪い痩せた男が
不機嫌そうに鋏(ハサミ)を持って現れた。

私がはじめて林家正楽を見たのは
30年も前のこと。
「寄席へいこか」と父に誘われ
はじめて鈴本へ行った。
その時見たのは、二代目林家正楽。
落語をやったものの訛りがとれずに
紙切りに転向したという二代目は
ふっくらとして柔和であった。

寄席の出し物のうち
落語の合間にはさんである
奇術や曲芸、三味線漫談などを
「色物」というのだということも
そのとき鈴本で教わった。
紙切りの芸も色物の一つである。

舞台の三代目正楽が「お題を」と言うと、
客席のあちこちから、
「舞妓さん!」「白雪姫と七人のこびと!」と
声が飛んでくる。
紙切りは、紙が切れればいいだけではなく、
「リストラ」という題を出されたときに
「りす」と「虎」とを切りだせる切れ味が必要で、
お客には、演者が切れ味を
最大限に発揮できるような要求
をするセンスが問われる。

目つきの悪い男は、顔をしかめたまま
お囃子に乗って鋏と身体とを動かし
聞き取りにくい声でとつとつと話をする。
「とりあえずお題を、と言いましたら、
『とりあえず、ビール』と言われまして。。。」

笑いが静まりお囃子が切れると
紙は「弁慶」に変わっている。
三代目のしかめっつらは
しばし、はにかんだ笑顔に変わる。

それからしばらく
しかめっつらと笑顔とを何度か繰り返し
男は最後に精巧な「ドラえもん」を切って
舞台を降りる。

あともう少し居てほしかった。
ちょっとかがんで去っていく
後ろ姿が色物の素敵。


三代目林家正楽
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# by mironobonus | 2005-05-14 10:50 | ココロと気持ち

おしらせ 5/9

喫茶ブログにリンクさせていただきました。
お茶と和菓子のフィールドワークが
楽しくてためになる、おいしいブログです。
ぜひお訪ねください。

私はちょっと仕事がたてこんできたので、
しばらく更新がまったりになってしまいます。
おいでの方は各所リンク先で楽しんでくださいね。

頭の余裕ができたらすぐもどります。
ではでは。I'll be back soon!
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# by mironobonus | 2005-05-09 07:27 | INFO.

ゲシュタルト療法

ちょっと前のこと、ゲシュタルト療法を体験した。

ゲシュタルト療法というのは
フレデリック・S・パールズによって始められた
心理療法のひとつである。
三つの離れた点を見て「三角」と受け止めるように、
人間はものごとをバラバラに知覚するのではなく
意味のあるものとして統合して認識する傾向がある、という。
また、「ココロ」と「カラダ」に二分されていた
精神活動と身体活動を統合し、
たがいに密接にリンクしあうという考え方をとる。

実際のゲシュタルト療法では、
ささいなしぐさ、姿勢、表情を敏感にとらえ、
これら「身体の言葉」を聞き取り
脳が何を表現したいかを自ら気付いていくことで
心の平安を得ようとする。

実際、ゲジュタルト療法を体験してみると、
「あ、そうか!」と自ら気付いたその瞬間に
さざなみが伝わってまた静かな水面に戻るように
一瞬にしてこころの平安が訪れる。

一瞬で伝わるさざなみのようなもの、
それはたぶん、脳内の電気的活動であろう。
精神活動、すなわち脳の活動は、
かなりの部分、電気的な活動によって成り立っている。
脳を構成する神経細胞を例にあげても
神経細胞同士の連結部シナプスでは
化学物質により刺激が伝達され
細胞内では、電気的活動によって刺激が伝達される。

多くのデータがつぎつぎと入力される脳では
絶えず電位が変動し
場合によっては偏位し、不均衡を招くだろう。
その脳内電位の不均衡が
ココロの状態としてあらわれないわけはない。

夢が脳の活動を寝ながら調整するもの
と考えられるように、
脳の持つ
「ものごとを統合し意味のあるものとして認識する傾向」は、
脳にあらかじめ備えられた
電位調整のための修復ツールではないかとも考えられる。
ゲシュタルト療法はその修復ツールを起動させるための
ダブルクリックかもしれない。
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# by mironobonus | 2005-05-05 10:31 | ココロと気持ち

さとうたみこの秘密

高校生の頃、料理教室で
競馬のジョッキーのように小柄な先生が
次のように教えてくださった。

「洋菓子を作るときには、c0065761_2395758.jpg
『さとうたみこ』と
 覚えておけばいいよ」

 1 さとう・・砂糖
 2 た  ・・卵
 3 み  ・・水(牛乳など水分)
 4 こ  ・・粉(小麦粉など)

和食で言う「さしすせそ」と同じように
砂糖、卵、水分、粉の順番で
材料を入れていけばいいという教えであり
ケーキでもクッキーでも使える
魔法の言葉である。
ふと思いついてケーキを作った。

   卵         3個c0065761_2222342.jpg
   バター      スプーン2
 ホットケーキの素    80g
(ハナマサのプロ仕様)
   砂糖        40g
 バニラエッセンス    適宜

 数字が正確なのは、卵の数だけで
 あとはいいかげん。
 バターはオーブンを温めるついでに
 溶かしておく。

1 砂糖と卵の黄身をよくホイップして       「さとう」「た」
2 白身は別にホイップして                 「た」
3 黄味の方にバニラエッセンス(水分)を入れておき     「み」
4 砂糖と卵の黄身にホットケーキの素をふるいながら入れ   「こ」
5 ホイップした白身と溶かしておいたバターを混ぜて焼く 「たば?」

上記の手順を検証してみると、「さとうたみこたば」になってしまうが、
実は、ホットケーキの素を入れるのは一番最後でも良く、
溶かしたバターは液状であるから「水」と考えると、
「さとうたみこ」になっている。

ケーキ作りというと、正確に材料を量り
神経を使って作らなければいけない、
と緊張しがちだが、結構気軽に楽しめるのは
もし手順を間違えそうになったら
「たみちゃん」の言う通りにすればいいや、
という安心感があるからである。
やはり「さとうたみこ」は魔法の言葉である。

料理教室の先生は
さらにつけくわえてこうおっしゃった。
「『きむらみちこ』じゃないからね」

魔法の言葉は間違えると大変。
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# by mironobonus | 2005-05-02 22:00 | お茶とお菓子

第七官界彷徨

彷徨というのはさまようことなんだ。

六本木の交差点。1983年2月
アマンドと防衛庁の位置をよく確かめて
高速道路に沿ったゆるい坂道を下る。
よかった、目じるしの四川飯店がある。
今日は間違えなかったぞ。
ちょっと先の右側が自由劇場。

第七官界彷徨(だいななかんかいほうこう)という
言葉の小気味良さにちょっと行ってみようと思った。
尾崎翠も第七官界もなにもしらない。
演出:串田和美 「第七官界彷徨」自由劇場
帰りに原作の本を買って、それからは本の中をさまよう。

c0065761_23465374.jpg「第七官界彷徨」(作 尾崎翠 創樹社)

「よほど遠い過去のこと
秋から冬にかけての短い期間を
私は、変な家庭の一員としてすごした。
そしてそのあいだに
私はひとつの恋をしたようである」

一助、二助、三五郎の住む家。
女中部屋の住人ちぢれ毛の町子には
こんなこころざしがある。

「私はひとつ、人間の第七官にひびくような詩を書いてやりましょう」

蘚の恋情、あんこを煮る鍋、コミックオペラ、
くせ毛直しのびなんかずら、そして分裂心理学・・・
ページを繰るたび、言葉の胞子がはじけ、
尾崎翠の世界は読者を培地にして発育する。

彷徨しながらの七ならべも楽しめる。
一助、二助、三五郎。六の秘密は読んでから。
四を誰かが留めているから。

尾崎翠
画像は「尾崎翠全集」(創樹社)です
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# by mironobonus | 2005-04-29 23:47 | 読書の時間