知人の某氏は、食事の前に「いただきます」を必ず言われる。
ホテルのダイニングでもあんみつやさんでも、 ちゃんと手を合わせて真摯に「いただきます」とおっしゃる。 言葉の前にお箸を持ってしまったときには、 「あ、いけない」という風に、少しあわてて、 お箸を持ったまま指の先だけ合わせるようにして、 それからがつがつと、食事をされる。 だいぶ前、その姿をはじめて見たとき、 人柄というのは、こういうところに出るのだなあと感じ入り、 悪ぶった姿勢やうがった考えの染みこんでいる自分を恥じるとともに、 なにかとても美しい世界に、再会したような懐かしい気分になった。 その後も食事に同席させていただくときは、 「いただきます」のその瞬間をじっと見てしまうので、 私自身の「いただきます」はいつも じゃんけんでいうあと出しになってしまう。 「いただきます」の某氏とは、 なかなかお目にかかることができないが、 その方の「いただきます」は、私にとって、 その後の食事を必ずおいしくしてくれる 秘密の食前酒になっている。
by mironobonus
| 2005-03-03 08:16
| ココロと気持ち
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